株式会社設立後、税務署、年金事務所での必要な申請手続と申請書の作成
(2020.9.25に執筆しました)
税理士法人に所属していた当時、よくクライアントと話していたのは「税金=会社の経営コスト」、「税金コストは経営努力によってある程度コントロールができる」という考え方と、その直接の実行方法です。
では、会社をサラリーマンに置き換えるとどうなるでしょう?
「税金・社会保険=サラリーマンの奉職コスト」、「税金・社会保険コストは自助努力によってもほとんどコントロールができない」となります。これは社会の仕組みがそのようになっているからです。
つまるところ、コントロールができる側の、会社、経営者、主要幹部の裁量のもと、従業員、株主、取引先、お客様等のステークホルダーに対して、健全な事業環境を保証できるように、税金の知識を総動員する。
そして、事業活動を行ったうえでの手残り、すなわちCashを会社に資本蓄積し、ステークホルダーに対して様々な方法で還元していくことが重要です。
必要な、税金・社会保険その他の会社の経営コストのコントロールは、会社の設立時よりすでに始まっています。
株式会社設立後、行政機関への申請手続
本記事では、株式会社設立後、行政機関への申請手続までを取り扱います。
株式会社設立後の各種申請
事前準備
会社設立登記が完了すると、登記簿(全部事項証明書)、印鑑証明書を取得できるようになります。
この後、使う機会がかなりあるので、複数枚取得しておきます。印鑑カードは忘れずに作ります。
また、株主総会を開催し(書面だけでも…)、役員報酬を定めておきます。会社設立後、3か月以内に株主総会を開催する必要があります。
税務署に提出する書類
会社設立後、税務署に提出は以下の6種類です。その中で、マストなものはこちら。
法人設立届出書(必要)
青色申告の承認申請書(任意)
給与支払事務所等の開設届出書(従業員を雇用する前に)
源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書(従業員が10人未満の場合)
棚卸資産の評価方法の届出書(任意)
減価償却資産の償却方法の届出書(任意)
特に重要なのは、青色申告の承認申請書と、源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書になります。
青色申告の承認申請書
初年度より関係するメリットは大きく4つ。黒字見込みでも赤字になりそうでも、大きく関係してきます。
欠損金の繰越控除
30万円未満の固定資産を即時費用化
欠損金の繰戻しによる還付
固定資産購入時の一定額の税額控除、その他特別償却
中でも欠損金(赤字)の翌期以降への持ち越しができる(今の税制だと最長10年)のと、固定資産の全額即時費用化(器具備品はだいたいOK。車のような高額資産でもインパクト大)が大きいです。
デメリットを上げるならば、複式簿記、会計資料の具備、税理士とのやり取りが発生するぐらいです。
源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書
こちらも原則論になりますが、徴収した源泉所得を毎月納付することになっています。この特例の承認申請書を出すことによって、年2回の納付で済むことになります。
つまるところ、資金の支払サイクルを遅らせ有利にすることに他なりません。
都道府県税事務所
法人設立届出書を提出します。これはマストです。
市区町村役場
法人設立届出書を提出します。これもマストです。
年金事務所
一人親方の会社であれば、代表である自分の分を。従業員を雇用している会社であれば、従業員分の情報も記載して合わせて提出します。
健康保険・厚生年金保険 新規適用届
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
健康保険被扶養者(異動)届
労働基準監督署
労働保険関係成立届
労働保険概算保険料申告書
ハローワーク(公共職業安定所)
雇用保険適用事業所設置届
雇用保険被保険者資格取得届
およそ、市街地の駅前同じエリアに固まっている印象があるので、1日かけて全部回ってしまいましょう。
雇用保険関連の用紙が特別なもので、事前に紙をハローワークで貰ってきていなければ、現地で赴き直接書くことになります。
まとめ(株式会社設立後、行政機関での手続)
当面の優先順位のつけ方
基本的には設立後に一気に全部やらなければいけないのですが、会社の税務コスト削減のメリット、費用の支払サイクルの改善メリットを念頭において、必要な事項から優先的に行いましょう。
Cashに繋がることは、とにかくなるはや、ASAPで考えていきます。
後で落ち着いたら…と言っているうちに、もっとやるべきことがいくらでも出てきます。
設立時の設定が税金対策に直結する
会社の設立時から、税金対策は既に始まっています。
売上も利益も全く生まれていない状態でも、将来を見据えて対応しておくことがどれだけ会社にCashが残るようになるかに繋がっていきます。
とはいえ、それ以上に重要なのは、会社の事業がうまく回って、しっかりと利益を稼ぎ、ステークホルダーに対してしっかり還元をするということです。
しっかり稼いで、しっかり(必要な分だけ)納税し、強い事業を有する会社、ステークホルダーにとって良い会社を創っていきましょう。それは全てあなた次第です。
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