経営を支える経理の基本のいろは、独学でマスターして自分の財産にするには

ビジネス

(2020.9.25に執筆しました)

経理のイメージってどんなものでしょうか?

日商簿記3級から始まり、複式簿記、財務会計、原価計算、管理会計、IFRS、財務諸表、税務計算(法人税、消費税、事業税)、国際税務等々。とことん突き詰めれば、泥沼のようなよく分からない世界が広がっており、終着点もなく、果てしなく先へと繋がっています。

会社経営、事業を行うにあたっては、そこまでの細かい専門知識は特段不要です。

Cash、役務(サービス)、収入支出の出入を日次、週次、月次で把握しながら、後ろから追いかけて記録、記帳していくのが経理の基本的な考え方となります。

人のいない中小企業、特に設立したてのベンチャー企業にとっては、経理専門のスタッフをいきなり雇用するわけにもいきません。ゆえに、ある程度経営者が業務の巻き取りをする必要があります。

幸いなことに、必要となる知識は調べればどこにでも転がっていますし、数字に強いことはすなわち、現状の経営認識ができて、また、数字を使って自社の今を説明できる、見方を変えれば今後の成長可能性のまやかしもできる、ということです。

奥が深く、毎年ルールが変わり、勉強している時間がない…ということは、要はそこの箇所だけ切り取って外注してしまえばよく、いかに日常の基本的なところを巻き取れるかにかかっています。

そうは言っても負担は負担。自分でやるしかないんだ

経営を支える経理処理の基本

本記事では、事業を始めるに当たり、経理のベースとなる基本的な考え方を取り扱います。

そもそも経理ってなんぞや

小さい時から小遣い帳をつけてきました。大きくなってからは、家の家計簿をつけています。今年は副収入と、大きな医療手術があったので確定申告をしました。であれば、そもそもの忌避感、嫌悪感は薄いかもしれません。

会社も生き物なので、個人、夫婦、世帯を会社に置き直して、その生活の過程を数字で記録に残していくことが、すなわち経理です。実にシンプル。

重要性の高い経理業務の要素

経理処理をする上でも、重要な会社経理の管理業務の要素と大きく関係します。再掲となりますが、以下の5つです。

・販売(売上)管理
・在庫(仕入)管理
・キャッシュフロー(現預金)管理
・債権(与信)管理
・予実営業(PL)分析

経理処理の基本的な考え方

①現金・預金(Cash)を把握する

仕訳で書くと、「費用××× / 現金預金×××」。

今、いくら会社にCashがあるかを把握すること、今後どれくらいCashが出ていき、また入ってくるかを想定できていること、Cashが足りないならその手当(資金調達)、余っているなら業務拡大、事業投資を検討するのが会社経営で最も大事なことです。

売上、費用ではなくて、CashですCash。ざ、まねー。会社が生きている証は、生きているCashがあるかどうかです。

どんなに赤字であろうと、どんなに売上がへこんでいようと、会社の活動自体に動きがない状態であったとしても、Cashがある限り全く問題ありません。

したがいまして、現金、預金(Cash)を常に把握できるような業務の設計をしていくことを考えます。

将来の不明瞭な売上を見込んで商品の仕入をしないとか、衝動的に経費の無駄遣いをしないとか、未確定のCashを当てにした事業計画を立てないとかですね。

②売上は発生月(年度のいつぐらいかも)に認識する

仕訳で書くと、「売掛金××× / 売上×××」。

毎月末にその月の売上の発生分を、総ざらいで認識してその月に計上する。入金まで計上を待つのは、それはそれで保守的ではあるけれども、営業状況の把握が遅くなります。

最近では決算前の税金対策を対応することが多く、費用を前に収益を後ろにとすることが多いのですが、これは利益の出ている良い状態の会社の話。

基本は、費用というよりもCashの支払を後に、収益は前に、されど無理をしすぎず実態に合わせて、となります。

③在庫はCashを圧迫するのでなるべく持たない

仕訳で書くと、「棚卸資産××× / 仕入×××」。

在庫は売上をもたらしますが、営業活動が想定通り、また正常に行われない限りは、売上を通じて現金化されません。

同じことがひとにも言えて、事業活動が想定通り、順調に行われない限り、売上の回収を通じて人件費を賄うことはできません。固定資産への設備投資と考えると分かりやすいかもしれません。

したがいまして、売上の実績を見るのと同じぐらいの熱意で、在庫(仕掛品含む)の移動状況、不動在庫の有無、評価額を気に掛けるのが重要です。

全く動きのない在庫は早めに処理して、税金の減額を通じて現金化するのでも良いですし、値段を下げて売り切ってしまうのも良い。保管代もバカになりません。

つまり、在庫・ひと・設備は常にCashを圧迫するという考えでいることかと思います。

④売掛金はCashで回収するまで気を抜かない

仕訳で書くと、「現金預金××× / 売掛金×××」。

債権管理(与信管理)の重要性は、事業年数が長くなればなるほど切実に分かるようになるでしょう。

売掛金はCashではない、売上を上げるだけではCashにならない。Cashとして銀行口座に回収して、ようやく自社で使える自由な資産となります。その点で、手数料の問題はあるものの、債権のファクタリングサービスはいいサービスかなと思います。

取引先の信用状況を常にモニタリングしておかないことには、いざという時になってからでは時すでに遅し。

自社もまた、取引先から常にこの会社支払は大丈夫か、経営状況は大丈夫か、取れる(売れる)ものはまだ残っているか、経営者におかしな兆候はないかと、見られていることを頭に入れておくべきです。要は、お互い様。

⑤経費、人件費は発生の都度認識する

仕訳で書くと、「販管費××× / 未払費用×××」。

売上と考え方は同じです。実際の発生に合わせる。基本的にはモノであれ、サービスであれ経費を支出すれば対価の支払をし、その証拠たる請求書・領収書を貰えるので、どの月に受けた役務であるか、どの月に計上するかを判断して、その月内の費用として経理処理をします。

会社側の感覚でいうと、支払を遅らせれば遅らせるほど手持ちCashの余裕ができるので、支払は遅ければ遅いほど有利となります。それは、人件費の支払も他なりません。

⑥売上・費用の月次発生の異常値を見る

仕訳で書くと、「売掛金××× / 売上×××」、ないし「販管費××× / 未払費用×××」。

営業実績の元々の予算(予測)と実績の差異を求めること、経常的に毎月計上していた売上・費用がその月に限って計上されていないこと、その月に限って大きな金額が突然計上されていることの理由を究明すること、これらの分析はかなり重要な仕事です。理由は常に知りたい、しつこい気持ちはかなり大事。

まずは分析が可能となるように、実績をきちんと経理処理していることが第一。

次に、週次、月次ベースで数字の増減、異常値のモニタリング、必要の都度、原因分析を行えるようにしておくこと。理由が見えてきたら、それに対するアクションを考えて実際に行うことです。

請求書の出し忘れがあったとか、貰った請求書をなくしたとか、金額を間違えていた等の些細な原因はこの時点で分かりますし、ひょっとしたらもっと大きな虎のしっぽに繋がることになる、かもしれません。

まずやってみることはこれ

どんなに忙しくても、技術ヲタクでも、自学の時間が取れなくても、これだけは毎日(毎週)、気を付ける経営者になりましょう。

・出した請求書をかき集める
・貰った請求書をかき集める
・銀行口座から支払ったデータをかき集める
・銀行口座の入出金を記帳し、受け払いと突き合わせる
・現時点で銀行口座に残っている金額をメモする

その後、実際にどうすればいいのかは、詳しい人に聞くなり、Web記事で調べるなり、費用と時間のプラマイ、手間、優先順位を勘案して対処しましょう。

ルーチンを巻き取ることでコスト削減をする

経理処理には、複雑で経理のルールを知っていないとできない、勉強して身に着けるには時間がかかる、間違えると会社は損をしてしまうので専門家のレビューが必要という領域があります(財務諸表の作成、税務申告、会社買収による連結会計etc.)。

逆にそれ以外の点は、基本的にはルーチンが圧倒的に多く、日常だとシンプルな処理、かつ支払側を握っておくだけ、そのような程度にすぎません。

したがいまして、必要な分だけ、会計の薄い参考書なり、Web記事でクイックにマスターし、経理担当の人件費、サービスの依頼コスト、専門家の報酬を最低限に抑え、業務コストの筋質化を目指していきます。

まとめ(経理処理の基本)

経理は、実務、自学、実務の繰り返しで磨かれていきます

実務と自学の繰り返し

実務だけだと言われたことをやるだけ、自学だけだとただの科目(検定)試験合格者。

どちらも満たす座組とすることで、ようやく頭と手(とタイピング)が連動して動くようになります。もう、算盤と電卓の時代じゃないのです。

コスト削減分を文字通り資産とする

経理部配属の新入社員であれば、上の人が丁寧に(厳しくも)教えてくれるのでしょうが、経営者に教えてくれる人は、少なくともその会社にはいないでしょう。

経営者は夢を語りたいもの。ですが、空いている時間にこつこつ学んで、試してみる、いずれは自分の手で巻き取れるようにする。夢を語るのはそれからでも遅くありません。

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