毎月の月次処理の流れ③。月次決算、試算表作成を１営業日で終わらせるには

（2020.9.26に執筆しました）

前記事にて、経費精算、支払手続（振込処理）と順にステップを進めてまいりまして、いよいよ月次実績（BS, PL）を月次試算表（残高試算表）にまとめる、月次決算となります。

月次ベースで数字の実績をまとめるということは、過去の実績を、毎月を単位として今現在地点で把握する（過去⇒現在）、現在の状況を起点として将来の事業活動の意思決定に用いる材料を作成する（現在⇒未来）に他なりません。

また、会社の中長期の成果報告として年度決算が行われます。年度の決算報告を念頭に、

①．過去の業績の比較、分析を月単位で可能とする
②．年度計画の各数値に対して進捗管理を行う
③．最終の利益/損失を早期に予測し、決算見込の数字の見積もり精度を高める
④．年度の決算報告に向けて、月次レベルで前もって進めておく

ことも、大きな目的として存在します。

ギリギリになってから全部やるのは、結果うまくいかない、当時からやっておけばよかった、早めに気付いていれば別の対応ができた…となりがちです。

したがって、過去、現在、未来（将来）を繋ぎ、将来の事業活動の判断に資するもの、将来必ず行われる業務の精度を今の段階より担保しておくものとして、月次決算とそれに関連する経理締め処理の手続は、必要不可欠と言えます。

月次決算の目的と成果物をはっきりとさせ、いかにそれを手に煩わせることなく、簡潔かつスマートに終了させるか。

いかにして結果（月次の残高試算表）を経営に生かしていくか、考えることができるようになります。

月次決算、試算表作成による経理締めの業務

本記事では、月次決算の目的、経理締め、月次残高試算表の作成の実務までを取り扱います。

月次決算、試算表作成の業務の流れ

業務の流れを図示すると以下の通りです。

①を月内、②～⑤の月次締め処理を行ったうえで、⑥の月次残高試算表を作成することになります。

月次決算の手続

①月中処理

月中処理は、月内に可能な限り進めておきます。

売上票（請求書）の発行による売上の計上、発注書・納品伝票（請求書）の発行による仕入の計上もこれに含まれます。

経費の立替分の精算など、一部は月末後に行うこととなります。

②現金預金の残高照合

小口現金は、入金、払出の都度、現金金種表を用いて日次で管理していると思います。

月末を基準として、帳簿残高（小口現金の残高）と手提げ金庫内の現金の実額との照合を行います。

金額が合わないときは、経理処理漏れ、領収証の提出遅れ、他の場所に現金を保管していないか、あちこち探し回ることになります。

預金残高については、通帳の記帳、ネットバンクの入出金明細書（取引履歴明細書）を出力し、帳簿残高（預金残高）と照合し、差異原因を調査します。

③月次在庫残高の算定

クラウド在庫管理システムだと、手っ取り早いのはこれかな？

ZAICO

・モバイルで使える（携帯でQR/バーコードを読み取れると便利）
・金額が安い（無料または980円/月～）
・クラウド会計ソフトfreeeに仕入と納品をデータ連携で（MFが使えない…）

期末決算の場合、原則的に実在庫数を実際にカウントした数量に、在庫システム上のデータを修正しにいきます（期末実地棚卸の実施）。

月次処理では簡便的に、合理的な数量と認められる、在庫システム上のデータ数値をそのまま使って差し支えありません。

１年間、在庫の受け払いを行っていると、データと実数が合わない、品番によっては赤残（マイナスの数量）が発生しています。

この差を調査して、期末決算前に修正を行います。

通常、期中、月次は気にしなくても大丈夫です（赤残が多いと多少は気になる）。

商品の仕入をした全額が仕入高に計上されているので、月末にデータ上の「数量×単価」の金額だけ、棚卸資産（在庫）残高に振り替えます。

④経過勘定の処理

当月の使用（サービスの利用）に対する請求書で、実際の支払が来月以降になるものを「販管費××× / 未払費用×××」として、債務計上します。

また、一括で先払いしている保険料、保証料、利息、サーバー・ドメイン費用等の当月発生額（役務を受けたことにより費消した金額）を計算し、「販管費××× / 前払費用×××」として振替処理します。

翌月分を先に出金するもの（家賃等）は、支払日に「前払費用××× / Cash×××」で処理をしておき、翌月に「地代家賃××× / 前払費用×××」に振替を行い、役務を受ける月と費用の計上月を一致させます。

その他、入出金があったものの理由が不明で究明を後回しにいていた、仮払金、仮受金を実際の費用項目に合わせます。

⑤減価償却費の計上

固定資産、ソフトウェア、繰延資産の月次償却を行います。

固定資産の耐用年数に沿って年度償却額の1/12ずつ、毎月の減価償却費として計上します。

実務上は、税務上の減価償却資産の償却方法、耐用年数に沿って減価償却費を計算していることが多いと思います。

税務申告上、減価償却計算書及び月額表を提出しますので、同じ金額の計上になっているはずです。

⑥月次試算表の作成

①～⑤の月中、月次締め処理を行ったうえで、いよいよ月次の残高試算表（BS, PL）を作成します。

月次処理の目標、成果物はここまででOKです。

あわせて、経営報告に資する資料まで準備しておきます。

月次比較表、月次推移表、売上高推移表、予算実績対比表、経営分析報告といったものが該当します。

過年度実績の評価・分析、予算実績の進捗度/達成度の確認、翌月以降の業績予測に基づくキャッシュフロー分析、事業計画の修正等に用いられます。

金融機関からの借入を予定している際も、月次の残高試算表をベースとして、既存の返済履歴、今後の事業計画等が審査の対象となります。

月次残高試算表は重要な基礎資料です。

月次整理仕訳チェックリストの利用

月次締めで必要な月次整理仕訳、確認事項は概ね定型的です。つまり毎月同じです。

したがって、整理仕訳チェックリストを利用し、毎月計上漏れ、確認未済がないようにするのが有用です。①～⑤の項目ごとに確認内容をメモしてあり、毎月初に１つ１つ処理を行います。

スケジュール感

目標としては、５営業日内に、経営分析資料の作成を完了させることです。

その中でも月次決算、月次残高試算表は１営業日での完了を目指したいところ。

経営者の立場だと、毎月、上席者に経営報告書を出すわけでもないので（銀行、ベンチャーキャピタル等の株主がいれば別ですが）、経営管理に資するものを作ればOKです。

幹部社員との重要な経営会議に使う、毎月のハイライトの数字を社員向けにリリースするなども考えられます。

経理資料を作ること自体は、目的かつ、それが成果物ではありますが、将来に向けてどのように使いこなしていくかの方が遥かに重要です。

そのためにも、正確かつスピードをもって、必要な資料だけを作成することをイメージします。

まとめ（月次決算、試算表作成による経理締め）

経理締めを１営業日で終わらせる

つまるところ、事前準備が正確にできていること、月次のトピックスを前もって把握できていること、場数をこなすことによる慣れ、これらが正確かつ迅速にクリアすることのコツです。

月次決算、経理締めのみ、他の社員、外部の専門家（税理士等）に手伝ってもらうにしても、情報、データ、請求書現物、その月に生じた出来事やトピックス等をうまく事前に共有できているべきですね。

これでようやく１営業日での業務完了が見えてきます。

残りの29日は収益を稼ぐのに充てたい

月次決算を１日で全部終わらせたとしたら、どうなるのでしょう。

残りの29日は、余すことなく事業活動に充てて、ばりばり収益を稼いでいくことが可能となります。

突き詰めると、経理締めの簡素化とは、Cash、収益を稼ぐ実働日を増やすことに他ならないのです。

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